資本金の額
1円会社の設立も可能ですが、一般的には、資本金の額は100万~300万円程度あった方が無難かと思います。
資本金の額
設立時の株式会社の資本金の額は、原則として、株主となる者が当該会社に対して払い込みまたは給付をした財産の額とされています。
株主となる者が複数いる場合は、原則として、その全員が出資した財産の額の合計が資本金の額となります。
設立時の資本金の額は、原則として1円以上でなければなりません。
なお、資本金の額が5億円以上である株式会社は、
大会社となります。
大会社には、機関設計などに様々な制限があります。
資本準備金
設立に際して株主となる者の払い込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができます。
この資本金として計上しないこととした額のことを払込剰余金といいます。
払込剰余金は、
資本準備金として計上しなければなりません。
例えば、設立に際して株主となる者が出資した財産の額が500万円である場合、500万円から250万円までの範囲の額を資本金の額とすることができます。
この場合、資本金として300万円を計上したときは、残りの200万円が資本準備金の額となります。
1円会社について
現在、資本金の額が原則1円以上であれば株式会社を設立することができます。
実際に、資本金1円で設立し、順調に業績を伸ばしている株式会社もあるようです。
しかし、金融機関の融資を受ける場合など、資本金の額が問題となるケースがありますので、資本金の額を決定するには、当面の事業計画と照らし合わせて、十分に検討する必要があります。
一般的には、100万~300万円程度の資本金があれば、ひとまず余裕を持った経営ができるかと思います。
最低資本金制度の撤廃
かつては、株式会社の資本金の額は1000万円を下ることができないとされていました(最低資本金制度)。
しかし、この制度は2006年に廃止され、現在では資本金の額が何円でも、株式会社を設立することができます。
金融機関の融資
株式会社を運営していく中で、資金繰りのために、銀行や信用金庫などの金融機関の融資を必要とする局面があるかもしれません。
当然、融資を受けるには金融機関の審査を受ける必要がありますが、その際に、資本金の額は重要な審査項目の1つとなります。
もちろん、他にも、株式会社の業績、会社が属する業種の景気の動向、差し入れることができる担保など、様々な要因がありますが、一般的に、わずかな資本金しかない株式会社への融資は困難と言えるでしょう。
取引先への信用
資本金の額は登記事項です。
つまり、法務局で発行する登記事項証明書を確認すれば、誰でも株式会社の資本金の額を確認することができます。
もちろん、資本金の額だけが株式会社の信用力を表すバロメーターではありませんが、全く新しく取引をしようとする相手なら、資本金の額をチェックして参考にすることは考えられます。
実際、取引先の登記事項証明書を取得して信用力を調査する企業は増えているそうです。
その点も踏まえて、資本金の額を決めた方がいいでしょう。
許認可等との関係
監督官庁の
許認可等が必要な業種の場合、一定以上の資本金がなければ許認可等が得られないことがあります。
許認可等の要件については、事前にしっかりと確認しておくべきでしょう。
そうは言ってもお金がない
以上の説明で、資本金の額の重要性を理解していただけたかと思います。
ですが、まとまった出資を現金で用意するのはなかなか大変です。
そこで便利なのが、
現物出資です。
現物出資とは、金銭以外の財産をもってする出資のことです。
発起人は、設立する株式会社の業務に必要な自動車、機械類などの財産を金銭の代わりに出資して、その価格を資本金として計上することができます。
税金との関係
上記で資本金の額が低すぎる場合の弊害についてご説明しましたが、だからと言って資本金の額が高ければ高いほど良いという訳ではありません。
ここでは、資本金の額を低く抑えることによってできる節税についてご説明します。
結論としては、資本金の額が1000万円未満であれば、節税の効果が大きいと言えます。
消費税
消費税においては、課税期間の前々事業年度(基準期間)における課税売上高が1000万円以下の株式会社については、納税義務が免除されています。
したがって、新たに設立された株式会社には基準期間が存在しないため、設立1期目は原則として免税事業者となります。
しかし、事業年度の基準期間がない株式会社のうち、事業年度開始の日における資本金の額が1000万円以上である会社については、その事業年度における消費税の納税義務を免除しないこととされています。
つまり、資本金の額が1000万円未満の株式会社は、 設立後の1事業年度分については、売上高のいかんに関わらず、消費税の納税義務が免除されるのです。
なお、設立後最初の事業年度をできるだけ1年に近い期間に引き延ばせば、それだけ免税される期間(最初の事業年度)が長くなります。
法人住民税
法人住民税(法人道府県民税)は、法人が都道府県に対して支払う税金です。
株式会社も法人なので、法人住民税を支払わなければなりません。
法人住民税は法人税割及び均等割からなっており、このうち、均等割については、資本金の額1000万円を境として、税額が大きく異なります。
つまり、従業員数が50人以下の株式会社における法人住民税の均等割は、資本金等の額が1000万円以下の場合は年額7万円(原則)ですが、資本金等の額が1000万円超ないし1億円以下の場合は年額18万円(原則)であり、その差は2倍以上となっています(2019年時点)。
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法人事業税・法人都民税(東京都主税局ホームページ)